F1統括団体であるFIA(国際自動車連盟)の技術委員長チャーリー・ホワイティングは、シーズン中という不可解なタイミングでブロウン・エキゾーストの規制をスタートさせることに関連し、圧倒的な競争力を持つレッドブルの足を引っ張ろうとしたのではないと、その政治的な意図を否定した。
「いくつか書かれた記事は確認している。しかし率直に言って政治的な意図はないよ」と、ヨーロッパGPで記者に囲まれたホワイティングは話す。
ブロウン・エキゾーストとは、クルマを地面へ押し付けるためのダウンフォースを発生させるディフューザーへ、排気ガスを流し込むことでディフューザーの効率を向上させるシステム。今回問題となったのは、アクセルを踏んでいないときにも排気ガスをディフューザーへ流すシステムを複数のチームが開発したこと。
これを受けてFIAは、ヨーロッパGPから予選と決勝の間でのエンジン設定変更を禁止し、予選のみ極端な設定にしてディフューザーへ決勝時よりも多くの排気ガスをディフューザーへ流すことを防止。また、7月10日に決勝が行われるイギリスGPからは、アクセルを踏んでいない際にアクセル全開時の10%以上の排気ガスを排出することを禁止する。
レッドブルのデザイナーであるエイドリアン・ニューイ、チーム代表クリスチャン・ホーナー、そして両ドライバーは、Fダクトやダブル・ディフューザーといった以前の新技術は、シーズン終了後に廃止されていたと、口をそろえる。
「これは純粋に技術的な介入だ。やましいことは何もない」と、ホワイティング。
Fダクトやダブル・ディフューザーとブロウン・エキゾーストの違いは、前者が規則の独創的な解釈だったのに対して後者はルールに反して空力を促進するものだと、FIAは考えている。
「われわれは、既存の規則を破る者を止めているだけだ。規則を変えるわけじゃない。」
さらにホワイティングは、予選から決勝にかけてのエンジン設定変更は完全に禁止されたわけではないと、その解釈を明確にした。
「ドライバーは、例えばハンドルのスイッチでいろいろな変更が許されている」とホワイティングは言う。設定変更のためにマシンにコンピューターを接続することが禁止されたのだ。
メルセデスGPのチーム代表ロス・ブラウンは、こうしたホワイティングの発言を支持する1人だ。これで、チームによる正な異議申し立ては回避されたかもしれないという。
「(抗議は)F1にとって良いことではない。競技委員たちはドロ沼の議論にはまるところだったね。もしかしたら控訴審に持ち込まれるかもしれない。ロクなことにはならないよ」