4年前にF1デビューした当時のセバスチャン・ベッテル(現レッドブル)は、将来2年連続でチャンピオンになるドライバーには見えなかった。そう話すのは、ベッテルが2007年に急きょF1デビューを果たした際のチームメートだったニック・ハイドフェルドだ。
2007年のベッテルは、レッドブルからレンタル移籍のような形でBMWザウバー(現ザウバー)にテストドライバーとして在籍し、金曜のフリー走行に出走。当時BMWザウバーの正ドライバーは、今季途中でロータス・ルノーGPのシートを奪われたハイドフェルドと、2011年シーズン開幕直前にラリーレース中の事故で大ケガを負って今季のF1参戦を断念したロバート・クビサ(現ロータス・ルノーGP)だった。
「あのころは、セバスチャンがF1界を席巻するなんて思いもよらなかった」ベッテルと同じドイツ出身のハイドフェルドが『Auto Bild(アウト・ビルト)』に語っている。
BMWザウバーの金曜ドライバーだった2006年と2007年には、金曜日に行われるフリー走行セッションでベッテルはしばしばトップタイムを記録していた。しかし、たいていの場合ベッテルは、ハイドフェルドとクビサの新品のエンジンを使い、新品のタイヤを履いたクルマを走らせていた。
「(燃料)タンクが空のときにベッテルはいいタイムを記録していたけれど、ロバートや僕に比べると遅すぎたんだ」
「セバスチャンは金曜ドライバーとしていい仕事をしてくれていたけれど、ここまでのドライバーになる可能性は見えなかった。ベッテルは十分に役割を果たしていても、クルマはベッテルが走らせる時以上の速さを秘めていたんだ」
2007年のカナダGPで大クラッシュを喫し、次戦の出場を医師から止められたクビサの代役としてBMWザウバーからF1デビューを果たしたベッテルを、トロ・ロッソが正ドライバーとして望んだときにBMWザウバーはたやすくベッテルを手放したが、その理由はハイドフェルドの言葉が示すとおりだろう。
しかし、BMWザウバーにとっては残念なことに、トロ・ロッソの正ドライバーになった後のベッテルの活躍は目覚しく、ハイドフェルドの言葉を借りれば「ただただ、止められない」強さを発揮している。