ブラジルGP決勝で、セバスチャン・ベッテル(レッドブル)はギアボックスに深刻な問題を抱えているとチームから無線で伝えられていたが、これはチームメートのマーク・ウェバーが優勝してドライバー選手権で2位になるために必要な25ポイントを手にするための芝居だったのではないかと、フェラーリはそう勘繰っていた。
2010年シーズンはチャンピオンまであと一歩に迫る活躍を見せていたウェバーだが、2011年シーズンは1勝も挙げることなく最終戦の地ブラジルへ降り立った。しかし、計算上はドライバー選手権で2位になる可能性が残されていた。
ブラジルGPの決勝レース中、2年連続ワールドチャンピオンとなったベッテルに対してレッドブルは、クルマのギアボックスに深刻な問題があると無線で伝え、その後にウェバーがベッテルを抜き去って行った。
しかし、各国報道陣が集まるメディアセンターでは、2位となったベッテルが最速ラップを更新し続けたうえに、ベッテルのギアボックスはブラジルGP直前から使い始めた新品であることも判明したため、ギアボックスに発生した問題を疑惑の目で見る記者も現れた。
「レッドブルは問題をやり過ごすのがうまいんだ」と、フェラーリのチーム代表ステファノ・ドメニカリはドイツ誌『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』誌にそう話し、クルマに発生したトラブルをうまく処理してレースを組み立てるはずのレッドブルがベッテルのギアボックス問題を処理できずにいたとは考えられない、と遠回しに語っている。
しかし当のベッテルは、自身を1991年のアイルトン・セナのようだとレース中に語っていた通り、ギアボックスの問題は本当だと主張している。1991年のブラジルGPでアイルトン・セナが乗ったクルマのギアボックスに問題が発生し、レース終盤には6速以外のギアを失いながらも、セナはインテルラゴスでのレースに勝利していた。
「僕のクルマのギアボックスに問題が起きていた、と僕ははっきり言えるよ」と、都合よくトラブルが起きたことを皮肉った記者に対してベッテルは断言している。
また、ウェバーも地元紙『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・サンパウロ)』の記者に「今年は君の意見に同意することが多かったけれど、今回は違う」と語っている。
『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』によれば、ウェバーは次のように語っていたようだ。「(ベッテルのギアボックスの調子が悪いことは)なんとなくわかった。ベッテルのクルマにはオイルもれも確認できたよ」
事実、レッドブルのアドバイザーであるヘルムート・マルコはドイツの『RTL』に、レース終了時にはベッテルのギアボックスに液体がほとんど残っていなかったと語っている。
「エイドリアン・ニューイはいつも“ギアボックスにオイルを入れすぎた”と言うんだ。でも今回のことで、ニューイにも(ギアボックスにオイルを入れる)その理由がわかったと思うよ!」