セバスチャン・ベッテルとレッドブルの組み合わせがF1の新時代を築くだろう。
これはオーストリア出身で、レッドブルの創業者であるデートリッヒ・マテシッツと親しい間柄にある元F1ドライバーのゲルハルト・ベルガーが示した見解だ。
ベルガーは、ベッテルが才能を開花させたレッドブルの兄弟チーム、トロ・ロッソの共同オーナーでもあった。
「もしベッテルがこの調子をキープしつつ、エイドリアン・ニューイ(メルセデスGPのデザイナー)が最高のクルマを造り続けたとしたら、事態は徐々にかつてミハエル・シューマッハ(現メルセデスGP)とフェラーリの組み合わせがF1を支配したような方向に向かっていくだろうね」とベルガーは『Die Welt(ディー・ヴェルト)』紙に語った。
1994年、1995年にベネトン(現ロータス・ルノーGP)でF1タイトルの連覇を果たしたシューマッハは1996年にフェラーリへ移籍。さまざまな苦難を乗り越え、2000年にフェラーリで通算3度目のタイトルを獲得すると、それを皮切りに2004年までタイトルの5連覇という偉業を成し遂げた。
しかし、かつて3度の世界王座に輝いた経験があり、ベルガーと同じくオーストリア出身の元F1ドライバーであるニキ・ラウダは、シューマッハが打ち立てた7回という世界タイトル獲得回数をベッテルが更新できるかどうかには疑問があるようで、「ミハエルの記録には、おそらくベッテルも手が届かないだろう」とコメントした。
ラウダは、シューマッハが成功した影には、4億ユーロ(約400億円)に達していたとも言われているフェラーリの年間予算と、制限がなくいつでも行うことが可能だったサーキットでの実走テスト、そしてフェラーリにタイヤを供給していたブリヂストンとの協力関係が大きな要因であったとし、「彼らにとっては完ぺきなシステムだった」と指摘している。
だが、ピレリのモータースポーツ責任者ポール・ヘンベリーは、ベッテルが2011年シーズンにピレリの拠点をいきなり訪問してきた、唯一のF1ドライバーであることを引き合いに出し、それらのほんの些細(ささい)なことがベッテルに他のドライバーたちとの違いをもたらしていると述べた。
その電撃訪問はクリスマス期間中であったと、ヘンベリーはスペインの『Marca(マルカ)』紙に語った。
「彼は研究室を見学したり、スタッフと会ったりして何が起こっているのかを知りたがっていた。そしてスポーツ面や戦略、コンパウンド(タイヤの材質)など、すべてに考えを巡らせていたよ。それが彼にどんなアドバンテージを与えたかは分からない。でも、もしクルマの細かいことにまで同じ姿勢で臨んでいるとしたら、ベッテルが成功しているのもうなずけるはずだ」とヘンベリーはベッテルの真摯(しんし)な姿勢を評価した。