セバスチャン・ベッテルが2年連続でタイトルを獲得し、それ以後も圧倒的な強さでレースを席巻しているにも関わらず、所属チームであるレッドブルの首脳陣はベッテルに少しばかり不満を抱いているようだ。
ベッテルは韓国GPの際、大きなリードを築いてトップで最終周回に突入。通常では、クルマのトラブルやドライバーのミスを避けるため、こういった状況ではペースを落とすのが常識になっている。しかし、ベッテルはチーム側の指示を無視して最終周にファステストラップを記録したため、首脳陣からの「お説教」を受けていた。
その2週間後、初開催となったインドGPで、ベッテルはポールポジションを獲得。決勝では終始トップを走行していたにもかかわらず、またもチームの指示を無視して最終周にファステストラップを記録した。
『Bild(ビルト)』が伝えるところによれば、チーム代表のクリスチャン・ホーナーと同チームのドライバー育成担当コンサルタントであるヘルムート・マルコはともに、ファステストラップを記録することにこだわっているベッテルを公的にも私的にも注意したという。
ホーナーはこれを認め、次のように述べている。
「彼は、われわれがそれを好ましいと思っていないことを分かってはいるよ」
イタリアの『Corriere della Sera(コリエーレ・デラ・セラ)』は、ファステストラップ記録を目標にすることが、ベッテルにとってモチベーションを維持する唯一の手段になっているのではないかと推測し、次のように書いている。
「彼はもはやライバルたちと戦っているのではなく、記録との戦いをしている」
しかし、マルコはこれを否定し、次のように語った。
「無用のリスクを冒すべきときじゃなかった。彼にそう言ったんだが、ときとして彼は耳を貸そうとしないんだ」
その一方、元F1ドライバーで、オーストリアのテレビ局『ORF』で解説者を務めるアレキサンダー・ブルツは、ベッテルがファステストラップにこだわることに対してなぜレッドブルがそれほどまでに神経質になっているのか、別の見解を持っているようだ。
「レッドブルはベッテルがクラッシュすることを心配しているんじゃない。彼らが心配しているのは、ベッテルのパフォーマンスによってほかのチームたちが、レッドブルのクルマは何かルール違反をしているのではないかとFIA(国際自動車連盟/F1統括団体)へ申し立てることだろう」
「僕にはスポーツそのものより、政治的な不安があるように見えるね」