2011年F1第7戦カナダGP決勝が、6月12日(日)の現地時間13時(日本時間26時)から、ジル・ビルヌーブ・サーキット(1周/4.361km)で行われ、ジェンソン・バトン(マクラーレン)が最終ラップで逆転という劇的な優勝を果たした。小林可夢偉(ザウバー)は、13番手から一時は2番手まで追い上げ、最終的には7位入賞を達成した。
レーススタート時の天候は曇り、気温19℃、路面温度は20℃。現地ではレース前に断続的な雨が続いたことから、路面がぬれている状態でスタートを迎えた。そのため、2種類ある雨用タイヤ、ウエットとインターミディエイトのうち、全車がウエットタイヤを装着し、セーフティカーが先導する形でレースがスタートした。
今年から、追い抜き増加を目的に導入されたDRS(空気抵抗低減システム/可変リアウイング)だが、路面がぬれていることもあり、スタートの時点では使用できない状態になっている。雨はやんでいる状態であるものの、路面の水量は多く、ヘアピンの立ち上がりではセーフティカーでさえもリアが滑ってしまう状態だった。しかし、4周目終了時にセーフティカーがピットへ。
5周目からセーフティカー導入が解除されると、2番手スタートのフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)がポールスタートのセバスチャン・ベッテル(レッドブル)に1コーナーで仕掛ける。ベッテルはトップの座を守ったが、その後ろではマーク・ウェバー(レッドブル)とルイス・ハミルトン(マクラーレン)が接触。これにより、ウェバーが大きく順位を落とした。
また、13番手スタートの小林可夢偉(ザウバー)がみるみる順位を上げ、7周目終了時には8番手にまで浮上。そして8周目、メインストレートでハミルトンとジェンソン・バトン(マクラーレン)が接触。バトンはチーム無線で「何やってんだよ!」と怒った様子で叫んでいた。ハミルトンがバトンを抜こうとしたものの、バトンと壁の間に無理やり入ろうとする形になり、ハミルトンのフロントとバトンのリアが接触した。
これによってセーフティカーが出動。ハミルトンはコース上にクルマを止め、すでにリタイア。バトンはピットへ戻ってパンクしたタイヤをインターミディエイトに交換した。また、これによって可夢偉は6番手まで順位を上げた。
13周目からレースが再開。レース再開後、上位では順位変動がなくこう着状態となったが、中団に沈んだバトンが速いペースで走行。バトンはインターミディエイトを装着しているため、これを見たライバルチームが続々とピットへ入った。上位でも、2番手アロンソと5番手ニコ・ロズベルグ(メルセデスGP)が17周目終了時にインターミディエイトへ交換。次の周には3番手に浮上したミハエル・シューマッハ(メルセデスGP)もインターミディエイトへ交換し、可夢偉が3番手に上がった。
しかし、雨が急激に強くなったため、20周目に再びセーフティカー導入。ここでアロンソ、バトン、ロズベルグがピットへ入り、再びウエットタイヤを装着した。また、次の周にトップのベッテル、4番手ウェバーがピットインし、ウエットタイヤからウエットタイヤへ交換している。21周目終了時には2番手マッサと、まだインターミディエイトを装着していたシューマッハがタイヤ交換を行った。これにより、可夢偉は2番手に浮上した。
23周目の時点でもセーフティカー先導が続いているが、トップを走るベッテルはチーム無線で、視界が悪く、とてもレースをできる状態ではないと伝えていた。そして25周目、赤旗が出され、レースは中断となった。結局、レースは約2時間中断され、現地時間15時50分(日本時間13日午前4時50分)に全車がウエットを装着してセーフティカー先導で再開することとなった。
レース再開後もセーフティカー先導が続いたが、34周目終了時にセーフティカーはピットへ。1コーナーに向けてマッサが可夢偉を抜いたものの、すぐに可夢偉が抜き返し、可夢偉が2番手の座を取り戻した。また、この周の終わりには中団以降で多くのクルマがピットインし、インターミディエイトへ交換した。
36周目終了時に、2番手の可夢偉以下の上位勢がほぼ全車ピットへ入り、インターミディエイトへ交換。しかし、トップのベッテルはウエットのまま走り続けている。そして37周目にターン3、4でバトンと接触し、アロンソが壁にクラッシュ。バトンはパンクしてピットへ向かった。これで再びセーフティカーが導入され、ベッテルもピットインし、タイヤを交換した。
セーフティカーの後ろで隊列が整うと、トップはベッテル、2番手は可夢偉、3番手マッサとなった。そして、レースは41周目から再開。レース再開後、トップのベッテルが少しずつ可夢偉との差を広げていった。また、マッサが可夢偉の背後にピッタリとつけてプレッシャーをかけているが、可夢偉は2番手を守り続けている。そして、44周目の時点からDRSの使用が許可された。
46周目、可夢偉の背後につけ、DRSを使えるマッサがファステストラップを更新しながら可夢偉を追うが、可夢偉も自己ベストを更新し、2番手の座を譲らない。路面はコースの一部で走行ライン上が乾いている状態で、周回を重ねるごとにラップタイムが向上している。
50周目、可夢偉がターン8、9のシケインでミス。このすきに4番手シューマッハが2番手に浮上。マッサも可夢偉を抜き、可夢偉は4番手に後退した。51周目終了時にマッサとシューマッハがドライタイヤへ交換。しかし、マッサはスピンしてノーズを壊し、翌周に再びピットイン。また、ここでベッテルと可夢偉もドライタイヤへ交換した。
54周目終了時のトップはベッテル、2番手シューマッハ、3番手ウェバー。可夢偉は4番手につけていたが、1コーナーでバトンに抜かれ、5番手に後退した。56周目、ターン2で可夢偉にニック・ハイドフェルド(ロータス・ルノーGP)が追突。ハイドフェルドは壊れたノーズに乗り上げる形でコントロールを失ってクラッシュ。この事故で破片が飛び散ったため、またもセーフティカーが出動した。
60周目からレースが再開。レース再開時の1コーナーで可夢偉が滑ってしまい、ビタリー・ペトロフ(ロータス・ルノーGP)に抜かれ、6番手に後退してしまった。また、2番手シューマッハ、3番手ウェバー、4番手バトンが接戦を繰り広げている。3台による激しいバトルの末、バトンが2番手に浮上。3番手ウェバー、4番手シューマッハとなった。
2番手に浮上したバトンはファステストラップを更新しながらトップのベッテルを追い、一気にベッテルとの差を詰めた。そして最終周、ベッテルがまさかのスピン。これでバトンがトップに立ち、そのまま優勝。大混乱のレースは最終周に首位が後退するという劇的な結末となった。
また、可夢偉はマッサからの攻撃に耐えていたものの、マッサと横並びの状態でゴール。しかし、可夢偉の背後につけていたマッサはDRSを使えたため、わずかにマッサが先行し、可夢偉は最終的に7位となった。
なお、バトンはハミルトンやアロンソとの接触がレース後、審議されることになっている。
・カナダGP終了後ランキング
・【結果】カナダGP決勝、各ドライバーのタイム、タイム差など