タイヤサプライヤーがピレリに代わったことで、今年のF1では「おかしな状況」が生まれる。
こう語ったのは、日本人唯一のF1ドライバーとなった小林可夢偉(ザウバー)。現在最速といわれるレッドブルと、パフォーマンス的には最も厳しい状態にあるといわれるヒスパニア・レーシングを例に挙げ、可夢偉は『Auto Motor und Sport(アウト・モートア・ウント・シュポルト)』へ次のようにコメントした。
「レッドブルがヒスパニアに抜かれることもあるでしょうね。もしレッドブルのタイヤが周回を重ねた状態で、ヒスパニアが新品のスーパーソフトを装着すれば、それも可能ですよ」
「観客にとっては、ちょっと混乱するような状況ですよね」
これと似た状況が数年前に起きていた。2007年のカナダGP、レース中に使用が義務づけられる2種類のドライタイヤのうち、ソフト側の性能低下が大きいことに各チームが頭を悩ませていた。そのため、SUPER AGURIに所属していた佐藤琢磨は、セーフティカーが導入されたことを利用してソフト側タイヤの利用義務を消化。すぐにハード側タイヤへ交換した。
その後、多くのドライバーがソフト側タイヤの性能低下に苦しむ中、ハード側のタイヤを装着した琢磨が速さを見せる。そして、レース終盤には当時マクラーレンに所属していたフェルナンド・アロンソを琢磨が抜いた。
タイヤの性能差という理由があったにしろ、マクラーレンというトップチームに所属する元チャンピオンであるアロンソを、F1で最も小規模なチームであったSUPER AGURIの琢磨がコース上で追い抜く姿に、日本のファンが歓喜しただけではなく、海外でも大きな注目を集めていた。