F1の統括団体FIA(国際自動車連盟)は、前戦ドイツGPでフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)とマーク・ウェバー(レッドブル)が犯したルール違反に目をつぶった。
ドイツGPではレース後、昔ながらのF1ファンにとっては懐かしい場面があった。レース後にピットへ戻る際、2位になっていたアロンソはチームからの指示によってコース脇にクルマを止めた。これを見た3位のマーク・ウェバー(レッドブル)がアロンソの目の前で停車。サイドポッドにアロンソを乗せ、アロンソをピットレーンまで届けた。
以前のF1では、レースに優勝したドライバーが観客やコースマーシャルから国旗を受け取り、国旗を手にしながらウイニングランを走ったり、トラブルに見舞われたドライバーを自分のクルマに乗せたりするシーンが度々あった。
有名なところでは、1991年のイギリスGP、レースに優勝したナイジェル・マンセルが最終周でガス欠になったアイルトン・セナを自分のクルマに乗せた。昔ながらのファンにとってこのシーンは、「古きよき時代」のF1を象徴するようなものになっている。しかし、現在のF1ではレース終了後にクルマを止めることなくピットまで戻ることが規定されており、こういった行為は禁止されているのだ。
だが、ドイツGPでアロンソを乗せたウェバーにペナルティーは科されなかった。この件についてFIA関係者は、『Speedweek(スピードウィーク)』へ次のように語っている。
「もしわれわれがルールの文言どおりに対処したら、誰からの理解も得られなかっただろう。だから、ペナルティーは科さなかった」
また、ウェバー本人もイギリスの放送局『BBC』のコラムで、「デビッド・クルサードやマーティン・ブランドル(ともにF1中継の解説者)がBBCで少し心配するコメントをしていたと聞いたよ。僕たちがルールに違反したかもしれないってね。でも、みんな僕たちの意図していたことを酌んで対処してくれた」と書いている。
レース中のペナルティーに関する微妙な裁定や、ルール変更などでファンからの批判を受けることも多いFIA。しかし、今回のFIAの対応にはファンも満足することだろう。