3日(木)にジュネーブで開かれたF1委員会で採決された内容が非公式に伝えられ始めているが、その内容はチームの名称変更と、来年度のレーススケジュールに関するものだ。
しかしながら、もっと報道価値があると見込まれている議論、すなわちコンコルド協定(F1における各種規程や商業権等に関する取り決め)において競合するチーム間において“カスタマーカー(他者が製造したクルマ)”の販売や購買を自由化する、という件については誰もあまりはっきりしたことを語っていない。
現在の協定では、F1の車両については、エンジンを除いて原則として各チーム(コンストラクター)が独自に製造をしなくてはならないとされている。しかし、ばく大なF1参入コストを削減するために、他者が製造したクルマを購入することができる規定に変更すべきだという意見も出されており、今回のF1委員会にもその件が上程されると伝えられていた。
ブラジル人記者のリビオ・オリッチオは『O Estado de S.Paulo(オ・エスタード・デ・サンパウロ)』に掲載中の自身のコラムに次のように書いている。
「いつもそうだというわけではないものの、一般的には、F1委員会において論議を呼びそうな話題に関する討議が行われ、その結果がすぐに公表されないということは、それは承認されなかったとみていいだろう」
事実、イタリアの『Autosprint(オートスプリント)』も、今後に向けてもっとも可能性の高い結論は現行のルールをさらに厳しいものとすることだと考えているようだ。そうなれば、現在マクラーレンとフォース・インディアの間で締結されている技術提携契約なども危ぶまれてくることになる。
例えば、3日(木)にHRTがウィリアムズとの間の提携延長を発表したが、その際にもHRTはそのギアボックスとKERS(エネルギー回生システム)に関する提携が“コンコルド協定の合意内容に忠実に準拠するものである”ということを明確にその声明に記述する必要があると考えていた。
HRTもウィリアムズもそれぞれに“F1の製造部門選手権においては別個にこれに臨む”ということをメディア向けの声明に追記している。
フェラーリとともにカスタマーカー問題に賛同しているひとつのチームがトロ・ロッソだ。トロ・ロッソは、以前はその親チームであるレッドブル・レーシングとの緊密な協業関係を持っていたが、昨年から完全に独立したコンストラクターとなることを強いられている。
トロ・ロッソのチーム代表であるフランツ・トストは『Sportwoche(シュポルトヴォッヘ)』に次のように語っている。
「(2010年の)このレギュレーション変更についてのはっきりした理由を断定することは難しい」
「今日、われわれはいたるところで大規模な協業が行われているのを目にしている。これは経済的な観点からみれば非常に大きな意味を持つものだ。しかし、F1ではチーム同士の緊密な協業を行うことはできない。私に言わせれば、これは明らかに間違ったやり方だと思う」
いずれにせよ、現段階ではレッドブルとトロ・ロッソ間の関係拡大は現状での制限の範囲内で行わなくてはならないが、トストは中期的目標としてレッドブルと同じルノーエンジンを採用したいと明らかにしている。
ちなみに、現在トロ・ロッソが使用しているエンジンはフェラーリ製のものだ。