アブダビで行われているF1の若手ドライバーテスト。将来有望な若手ドライバーが参加しているということもあり、関係者からの注目は高い。
若手ドライバーテストは、過去のF1参戦経験が2戦以下のドライバーのみ参加可能だ。シーズン中のテストが禁止された近年のF1では、F1デビューを目指す若手ドライバーが実際にF1を経験できる、貴重な機会になっている。もっとも、モータースポーツの頂点たるカテゴリーだけあって、何ごとも額面通りにはいかない。すべてにおいて表と裏があるのだ。
先週末のアブダビGP終了後、15日(火)から17日(木)にかけて行われるテストを見守ることなく母国スイスに帰ったザウバーのチーム代表ペーター・ザウバーは言う。「純然たる“新人ドライバー”のテストではないね」
ザウバーが意味するところはなにか。それはどうやら、30歳の“若手”ゲイリー・パフェットがマクラーレンを走らせていることと関係ありそうだ。
「彼は十分、F1に乗る若さがあると思うよ」とマクラーレンのチーム代表マーティン・ウィットマーシュも反論する。
サーキットを実走するテストそのものが貴重になった今のF1で、たとえ若手向けの走行でも、トップチームは信頼のおけるドライバーを必要としているのが実情だ。規則書のどこにも、2012年パーツのテスト禁止が書かれていないためである。
「われわれの場合、技術的なプログラムに主眼点を置いている」とはっきり言うのは、メルセデスGPのチーム代表ロス・ブラウン。同チームは3日間のテストを通じてサム・バードを起用している。
「ニコ(ロズベルグ)と長期契約を結んだし、特に新人ドライバーは求めていない」と、ブラウンは認めた。
ザウバーが発したコメントには、もうひとつの裏が隠されている。多くの参加ドライバーは実際のところ、金を払ってF1に乗せてもらっているといった雰囲気だ。
例えば、ザウバーからテストに参加しているファビオ・ライマーは、数千万円もの持参金をザウバーにもたらしたと言われている。
『Blick(ブリック)』紙によれば、パドックからライマーの走行を見つめる富豪のライナー・ガンテンバインは、これまで1,600万ドル(約12億3,200万円)以上の大金をつぎこんでライマーのステップアップを助けているようだ。
正気か? との問いに、ガンテンバインはこう答えている。「確かにね。これはひとつの投資なんだよ。ファビオがF1に上り詰めた結果、私にいくらかの見返りがあれば、すごくうれしいよ」
「(2012年に向けて)ヴァージンやHRTと話をしているが、私としては彼に3年目のGP2を走ってもらいたい」