ロバート・クビサ(ロータス・ルノーGP)が、ラリー参加中のクラッシュで重傷を負ったことを受け、F1ドライバーが危険なスポーツを楽しむことを禁ずるべきだという意見がある一方、禁止しても無駄だという意見も出ている。
一時は危険な状態に陥り、手を切断する可能性もあったとされるクビサ。現在、容体は安定しており、手の切断も免れた。しかし、車体を貫通したガードレールによって右半身の複数個所を複雑骨折しており、長期的なF1欠場は避けられそうにない。
契約によって所属ドライバーが危険なスポーツをしないよう規定しているF1チームもあるが、ロータス・ルノーGPはクビサのラリー参戦を認めていた。
クビサが以前所属していたBMWは、契約によってラリー参戦を禁じていたが、ロータス・ルノーGPのチーム代表エリック・ブーリエは、クビサにとってラリーは欠かせないものだと参戦を認めた経緯を説明している。
一方、BMWのF1チームでチーム代表を務めていたマリオ・タイセンは、『AP通信』へ次のようにコメントした。
「F1の安全性を必死に高めておいて、ほかのレースに参加したドライバーが重傷を負うことにどんな意味があるというんだ?」
クビサのラリーに対する情熱に「同情心」を抱いていたと認めるタイセンだが、「F1で成功するにはドライバーがカギになる」として、さらに続けた。
「同じように情熱を抱いている、数百人の多大な努力を結果に結び付けられるのは、ドライバーだけなのだよ」
しかしブーリエは、「パンを買いに行ってバスにひかれる可能性だってある」と語り、クビサのラリー参加を認めたことを正当化した。
元F1ドライバーで、現在はF1中継の解説を務めているマーティン・ブランドルは、重要なF1テストの合間にラリーを走るのは「クレイジー」なことだとコメント。アメリカを中心に活動しているドライバーのパトリック・カーペンティアも、『Rue Frontenac(リュ・フロンテナック)』へこう語った。
「もし誰かを責めるのなら、それは彼のチームだ。(ラリー参戦を)認めるべきではなかった」
「特に、シーズン開幕が近い時期にはね。しかもテストとテストの合間だ。タイミングが悪かった」
また、元F1ドライバーで現在は解説者になっているジャック・ラフィーは、今回の一件で考え方を変えたという。
「私は以前から、日曜がくるたびに命をかけて戦っている彼らは、好きなことをする自由を認められるべきだという立場だった」
「今日では、状況が変わってしまったようだ」
「F1ドライバーは、約700名で構成されるチームの一員だ。それなので、ある程度の制限があるのも仕方ない」
しかし、クビサを見舞った元ルノーF1(ロータス・ルノーGPの前身)のチーム責任者フラビオ・ブリアトーレは、「誰も責めることはできない。事故とはそういうものだ」と語っている。
そして、ドライバーが危険なスポーツをすることを認めているチームは、ロータス・ルノーGPだけではない。クビサの友人であるフェルナンド・アロンソ(フェラーリ)は、事故の第一報を聞いたときスキーを楽しんでいる最中だった。そのため、フェラーリは危険なスポーツを禁じていないと思われる。
また、ヴァージンのチーム代表ジョン・ブースは、F1ドライバーを管理しようとするのは無駄なことだと語る。
「数週間前、ジェローム(ダンブロシオ)とティモ(グロック/ともにヴァージン)をスキーに連れて行った」
「“いいか、滑るのはコース内だけだぞ”などと、口が酸っぱくなるほど注意点を伝えてからリフトで頂上まで登った。だが、ゲートが開いたとたん、2人とも全速力で消えて行ったよ。そこらじゅうを滑っていた」
「それがドライバーだ。だからこそ彼らは特別なんだよ。過保護に彼らを守ることなんて不可能だ」