先に開催されたベルギーGPの決勝当日(8月28日)にタイヤのブリスター問題をめぐって、レッドブルとピレリの間で対立があったようだ。セバスチャン・ベッテルとマーク・ウェバーの両レッドブルドライバーが新品のタイヤでスタートすることが認められないと通達された後、ピレリの代表を務めているポール・ヘンベリーはベッテルに呼び止められていた。
現在のF1の予選はQ1、Q2、Q3の3ラウンドに分けて行われており、上位のタイムを記録したドライバーが次のラウンドへ進出する仕組みとなっている。そして予選の最終ラウンドとなるQ3に進出したクルマは、原則的にそのQ3で履いていたタイヤを決勝レースのスタート時点で装着するルールがある。レッドブルはQ3でタイヤにブリスター(※)ができてしまったことは安全性の問題に関わると主張していた。今年からF1にタイヤを単独供給することになったイタリアのタイヤメーカー、ピレリはそれに対し、そのような事態が発生したのはレッドブル側に責任があると反論していた。
レッドブルの最高技術責任者であるエイドリアン・ニューウェイは『BBC』に「正直言って、われわれの両ドライバーが無事にレースを終えられて本当にほっとした」と語った。
レッドブルが訴えてきたタイヤの基本的な安全性能に関するクレームは名誉棄損に該当するか否かを考える必要すらあったという、ピレリの広報担当者の話をドイツの『Der Spiegel(デア・シュピーゲル)』が伝えている。そして、「もしレッドブルが他のチームと同様に、われわれの仕様書に基づいていたら、彼らが問題を抱えることなんて決してなかっただろう」とその広報担当者は付け加えた。
ピレリは声明の中で、この問題は“一部のクルマのセットアップ”が原因であるとしている。そしてそのセットアップとはタイヤのキャンバー角(タイヤの角度)とタイヤの内部空気圧力を指していると考えられている。つまり、レッドブルは今回のベルギーGPで、タイヤと路面の接地面積が広くなり、コーナリングスピードが上がる仕様にしていたと見られている。しかし、それによってタイヤの特定の箇所に大きな負荷が掛かり、ブリスターが発生する可能性が大きくなった。結果としてタイヤ性能の低下、そしてパフォーマンスの低下に繋がってしまう。
「われわれのタイヤの使用に関する推奨に従ってもらっている限り、このような問題は二度と起こらないだろう」とヘンベリーは語り、「決してタイヤの安全性能に関わる問題ではない」と強調した。
マクラーレンの代表マーティン・ウィットマーシュは、レッドブルが限界を攻めすぎていたとのピレリの意見に同意し、ドイツの『Auto Motor und Sport(アウト・モート・ウント・シュポルト)』紙に次のように語った。「ドライバーの安全は保証されるべきだ。われわれは多少のパフォーマンス低下があっても安全性を優先する。他の一部のチームは異なる考え方みたいだけどね」
(※)ブリスター:タイヤに熱が入り過ぎて、ゴムの成分内の水分が沸とうしてしまい、タイヤの表面が水膨れのようになってしまった状態。こうなるとタイヤの性能が著しく低下し、グリップも落ちてしまう。